やわらかいよる



一度目の夜。
互いが見えないまま、
二度目の夜。
確かめ合うことが恐ろしくて、
三度目の夜。
繰り返すことの意味も問えない、
そして四度目の夜。

どろりと零れ落ちる白い液体がこの行為の無意味さをいつだって教えてくれた。
熱を失った身体が嘲笑うようなスピードで急速に冷えていく。
何も生まれないこの行為を。
それでも幾度となく夜を重ねていくと、思いもよらない感情が巣くう時がある。
もしかしたらもう戻れない場所まで来てしまったのかもしれないけれど。

分厚いカーテンで閉じたこの部屋には朝の日ざしも射さなかった。
暗い、ふたりしかいない世界。
俺たちはその部屋の中でまさぐりいながらも吐息を絡め、キスをする。
何度も、愚かなほど。
一歩、その部屋を出たら、すべてを忘れなければいけない。
だからこんな方法でしか、夜も紡げなかった。
俺もお前も。
縋るものの意味を取り違えたら、俺は母を裏切ることになるだろう。
だからこのままが正しい。

でも

夜の狭間と、偽りの朝の間を生きる俺たちに。
もうすぐ日が落ちる。

遠い遠い空の向こうへ。

だからお願い


あと少し長く続く夜のやわらかさをふたりに。






(静かに狂う)