♡直→売春班編 レイジとロン→道了編 そしてサムライのヘタレ具合が一度に襲ってきたらこうなりそうなBADEND?
♡しかしながらレイジと直しか出てきません。パラレルです。ぬるい性描写あり。直視点。
♡現在は冒頭部分しかアップされてませんが^^; それでもよろしければどうぞ。







































握り締めた鏡の破片を僕はとうとう自分に向けることができなかった。

帰りたい場所がある、大切な人がいる、その気持ちがないと言えば嘘になる。
けれどあの瞬間そんなものは綺麗事にしかならなかった。
死ぬのが怖かった。
足元で砕けたガラスの破片のように、僕の心の中も粉々になりそうだった。

ただ怖かった。


死にたいと心が叫べば、 同時に死にたくないと心は叫んでいた。
死よりも深い夢を見たかった。

もう、眠りについてしまいたい。
この、閉ざされた監獄の中で。











EUTHANASIA










薄暗い部屋だ。
換気が行き届かないこの場所は空気が止まってしまっている。
房にだって帰っているのに、ここに来ると時間の経過が途端に分からなくなってしまう。
変わらない事実はここで何日も何日も犯され続けているということだけ。
揺すられるたびにスプリングでなくギシギシと音を立てる粗末なパイプのベッド。
備え付けの錆びたシャワー。
精液が散ったシーツ。
絶望しかない現実を映すためにあるかのようなひび割れた鏡。
そのどれもが僕をあざ笑っているような気がしてならなかった。

苦しくてたまらなかった。限界など初めから来ていたのだ。

触らないでくれと頭を打ち振りながら叫ぶ。 ・・・痛い ・・・嫌だ。

そのどれを訴えても、止めてくれる人間はここには誰一人として存在しない。
理由は簡単だ。僕はブラックワークの売春夫だった・・・。
ここに訪れる囚人も看守も当たり前のように僕を抱きにきた客たちだった。
痛みを訴えれば訴えるほど、笑いながら手酷く犯され、中で出される、その、繰り返し。

玩具のように。僕の心などおかまいなしに。

もう、嫌だ。
逃げたい。これ以上、汚れたくない・・・っ。

だが無理だ。
そう頭では分かっているはずなのに現実を受け止め切れていない自分が恨めしくなる。

・・・届かない叫びを、どこにぶつければいいのだろうか?
項垂れた腕を壁に向かい振り上げる力も、既にない僕に。


死ねないのに、死にたかった。
・・・・・・死ねないのに。




聞きたくもない言葉を残して扉が閉まる。
僕にとっての本当の地獄は東京プリズンそのものの存在じゃない、今、僕がいる「ここ」だ。
寸前まで僕を犯していたのはタジマだった。
体に纏わり付く視線や、肌を這い回ったおぞましい指の感触が未だに僕の体内を燻っている。
・・・それどころかきっと一生消えないのだろう。

抵抗など意味のないものだと一度目から思い知らされた。
だから、諦めればいい。なら、逆らわなければいい。
それなのに抵抗を繰り返してしまうのは、タジマに触られることを僕のすべてが拒絶しているからだ。想像するだけでも酷い嫌悪感と吐き気が胸を襲う。
今日は殴られ、頭からベッドに沈んだところを腰だけを高く抱えられた体制で慣らしもせず挿入された。
衝撃で反り返った背中を強く押さえ込まれ、貫かれ、射精を塞き止められ、結局は押し殺した悲鳴が哀願に変わるまでその責め苦は続いた。
僕を見るタジマの目は狂気にぎらつき口元は恍惚に歪みきっていた。

タジマが現れる度に、僕が僕でなくなるようなそんな虚無感に襲われる。
それは僕の体を外側から内側から確かに蝕んでゆく。

消耗しきった重い体を叱咤してやっとのことでシャワーを浴びた僕は、無惨に脱ぎ散らかせられた服を着て、
ベッドの上に乗り、 扉に背を向け、端の方に体を寄せた。
次の客が来るまでの暫しの休息のはずだが、借りていた本を読む気持ちは萎えていた。
こんな気分で本を読んでも、脳が吸収することを拒否しそうだ。

今はただ、外からの罵倒や悲鳴を、少しでも遠ざけたかった。
この現実から少しでも遠ざかりたかった。
・・・惨めすぎて、どうにかなりそうなんだ。




扉が開く。
蛍光灯の僅かな光が、夕暮れの届かない檻の中を照らす。
次の客、これは絶望の光だ。
ここは少しの猶予も安らぎも与えてはくれない。
だが振り向く気力も振り向こうとする意志も僕にはなかった。
それでも一向に動く様子のない客に逆に不安を煽られ、(タジマじゃなければまだいいじゃないか)と心の中で呟きながらうしろを振り返る。
訪れた客は、閉じた扉の前に立っていたのはレイジだった。
なぜレイジが、僕の、元へ?

「・・・ここにはロンはいない」
天才ともあろうこの僕がわかりきったことを口に出してしまった。
「知ってるよ」
なんでもないことのようにそう言って、それでも下を向いたレイジの表情はわからないまま。

「もう、どこにもいない」
「・・・? なに、を言って、」
レイジが何を言っているのか分からない。
仕方なく靴を履いて、ベッドから下りた僕はレイジの前に立つ。
「ロンに何か、あったのか?」
「お前を迎えに来た」
「っ僕の話を聞け!」
胸倉を掴もうと腕を伸ばした僕の視界からレイジが消えた。
「っ!?・・・がっ、」
焦って後ろを振り向いた次の瞬間、胸と背中に衝撃が走った。
僕の後ろに回ったレイジによって壁に叩き付けられたのだと理解できたのは、 僕の両側についたレイジの手が、壁にぶつかり、だんっ、と音を上げた時だ。





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